7冠達成がかかった十段戦第4局は7冠達成にふさわしいような対局でした。
黒番 井山裕太6冠 白番 伊田篤史十段
163手まで黒中押勝ち
棋譜再生
黒番井山6冠の低い中国流から始まって、白6、黒7、白8とお互い星の石から小ケイマにしまって、黒9と星に割りうちしてじっくりした内容になる予感がしました。
ところが黒9の割り打ちの石から派生した戦いから乱戦になって、力勝負になっていきます。
伊田十段が白10と割り打ちした黒9に詰め寄ったところに手抜きして黒11と打ちます。
黒9は星の位置に高く打つことで1本で効かしとしている意味があるために手抜くことが多いそうです。
このあたりの善悪はわからないのですが、最近流行っている傾向があるようです。
手抜きに対して伊田十段白12、白14とかけて迫っていきます。
黒15に白16の交換を決めて、さらに黒17とケイマに飛びます。
次の1手がこの対局の流れを決めました。
白18のツケコシです。
白1とハネる手もあったのかと思ったのですが、切って全面戦争へ突入します。
ここまで進んで、昼食休憩になりました。
休憩から戻って打たれた次の1手がどうだったのか?
白30とこちらの石を動きだします。
それに対して当然黒31とハネていきます。
黒35とポン抜きしては、黒良しの形勢に見えます。
しかし左辺の黒が薄いので、力碁の伊田十段こちらの石へ迫る手を狙っているのだと思います。
白36に黒37、白38に黒39のツケコシと手筋の応手。
ここまできて、次の1手が難しいところでした。
次の井山6冠の手はなかなか気づかない手で
黒45の下キリです。
以下のように進むのですが
白50は薄くて下図のように本来白1とノビたいところですが、将来に黒2の押さえの効きがあるために左辺の黒石の目が強い形になります。
左辺の黒石に迫って打ちたいところなので、押さえたようです。
それで白50と頑張ります。
しかし白の薄みをついて黒51に黒53と手筋で切っていきます。
白54は仕方なく、黒55、黒57のカケと白4子に迫っていきます。
この4子を捨てては黒優勢ですから当然動き出します。
この次には井山6冠は黒71とポン抜きます。
これで十分とみているのでしょう。
この手では黒1と曲がるの手はなかったのか?と解説の高尾紳路九段。
このような図の変化も想像できたようです。
以下のように進み乱戦模様に
白84のキリに対して黒85と当てて黒87
これで持ちこたえているようで白は打つ手に困ります。
白1と曲がると黒にのツケコシの味などもあって、白は戦えない形のようです。
それで白88、白90とこの白の一団を補強していきます。
黒は91と完全に取り切って薄気味悪い味を無くして、この時点では井山6冠の勝勢の碁形に。
以下のように進んで
黒の次の1手は黒99といっぱいに迫ります。
この手はすぐにではないですが、将来的に左下隅に黒1とツケる味を見ています。
右辺が薄いので、黒1のように補強しておくのが、穏かだし勝勢の碁形だから安全だと思うのですが
井山6冠は、右辺へ入ってこいと誘っているようです。
当然白は右辺のどこかへ手をつけてきます。
伊田十段は白100堂々と打ち込んできます。
それに対して井山6冠 黒101のコスミツケに黒103と厳しく迫っていきます。
さらに進んで、黒109と下にはって、意地でもこの白石に目を作らせないようにしていきます。
伊田十段も必死のしのぎを見せます。
白110に黒1と押さえるのは目形ができるので、黒111と厳しくさらに追及。
右下隅の黒石の隅の味から白116キリとしのぎの手筋を見せてくる伊田十段。
黒は119と最強の手で、あくまでこの白石の追及の方針を変えません。
隅はコウになりました。
しかし中央から右辺にかけての白の大石が薄い形や左下隅のツケル手などもあって、このコウは頑張れそうです。
黒127の手に手抜きして白128と2段コウのコウを取ります。
次に井山6冠は黒129と打ちます。
これで目がないんでしょうか?
しのぎの手はあるのかわかりませんが?難解です。
中央に1眼、右辺に1眼つくりたいところです。
井山6冠、目はつくらせませんよと最強の手で応手。
黒147の時点ではどうやらこの白の大石の目を作ることは困難になってきたようです。
黒163手までと白の大石が死んで、井山7冠の誕生となりました。
勝勢の碁形でも、最強の手で挑む井山さんの迫力には驚きました。
僕など勝勢だと、安全な手を打つのですが
井山さんは危険を省みず最強に出ていきます。
さすが天才棋士です。
大石を仕留めて、7冠の達成にふさわしいような対局になりました。
負けた伊田さんには残念でしたが、これをバネにさらなる活躍を期待したいです。
伊田さん井山さん、いい碁を見せてくれてありがとうございました。
そして井山さん、前人未踏の7冠達成おめでとうございます。